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目的意識と整合性があってこそ人事管理といえる
池澤 章雄 金沢学院大学経営情報学部教授

96.10.09


(いけざわ ふみお)昭和8年神奈川県生まれ。東大卒。産能短大教授、産能大学経営開発研究本部主幹研究員を経て平成7年から現職。専門は経営管理論、労務管理論。著書に「人事考課の考え方・進め方」「男と女の新時代」「働きやすい職場管理」など多数。
 人事管理は狭義には、雇用管理つまり採用、配置、異動、昇格(資格昇格)、昇進(職位昇進)、退職という雇用の過程〜仕事と人を適合させていく過程〜全般にわたる管理を意味する。このような雇用管理は、定年までの雇用を前提とした内部昇進制度と結びついている例が多い。そして、長期雇用と内部昇進制度は、長期にわたる教育訓練、さらには能力開発を必要とする。
 組織との一体感を抱く従業員の多い日本の企業では、個人の専門的ならびに態度的能力の向上が組織の発展をもたらす。そうでなければ、企業は教育訓練や能力開発(自己啓発の促進も含めて)に取り組んでこなかった。そして、組織の発展(業績向上ならびに組織機構の拡大)が人事制度を通して、賃金上昇と職位昇進を中心とするプロモーションを個人にもたらし、労働モチベーションを高めてきた。
 わが国の労使関係の特徴である企業内労使関係が成立したのは、このような人事管理制度(欧米のテキストには、wage systemを別にして人事管理制度は出てこない)があるからだ。そして、この人事制度によって個別管理と集団管理(労使関係管理)が結びつき、調和的な労使関係(いたずらに対立的ではないという意味であって、御用組合ということではない)を作り上げてきた。しかしここに、わが国の人事管理の特殊性も生まれる。
 例えば、個人の賃金が産業別・職種別の労働市場(労使関係)や職業資格で決まらず、人事考課を参考とし昇給額や賞与の額が決められるという賃金決定では、評定者である上司との関係を従属的にするおそれもある。
 能力開発の方策を立案するに当たっては、人事管理の目的(能力の開発と活用、業績に対する公正な報酬)からみて、人事管理制度が機能しているのか否かについて検証することが大切であろう。
 例えば、異動は外部環境と内部環境の変化に適応していく措置である。それに、長期雇用を前提とする日本の多くの企業において異動は長期的な人材開発のためにも重要な制度である。これが、果して機能しているのであろうか。
 なお、人事管理のそれぞれの領域は相互関連的である。したがって、成員の配置と活用の計画をあらかじめたてていない採用は在りえない。仕事と人の結合をよりよくすることを意図とした教育訓練にしても同様だ。
 どこで何をやってもらうのか、という個別計画を持たない教育訓練では、実行性に欠ける。それに異動(新たな仕事)、さらには昇格や昇進を予定しない教育訓練・能力開発あるいは人事考課の施策では、その効果は期待できない。なぜならば、目的(何のために、いかなる能力を高めるのか)を明確にしない教育訓練では、その効率は低下する。また、努力して能力を高めても挑戦的な仕事が用意されず、昇格・昇進の機会を望めないようでは、その後の能力開発に向けてのモチベーションが低下してもやむをえない。
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