財団法人 北國総合研究所
CONTENTS
サイトマップお問い合わせ

会員サービスのご案内
会員案内
北國いい情報
ウィークリーレポート
北國TODAY
北國総研ビジネス情報懇話会
入会申込

北國総研について
ご挨拶・概要
役員・研究員のご紹介
事業内容・実績
提言
自主研究
そうけん掲示板
個人情報保護方針
お問い合わせ

提言

<< 戻る
街を歩く仕掛けの一考
中居 寿 北國総合研究所研究員

98.11.30


(なかい ひさし)1954年、内灘町生まれ。現在も在住。明治大学経営学部卒。地域CIや各種資料館などの文化施設計画に携わる。私的には「季刊ヒトビト」編集発行人。
 自然志向や健康志向などを背景にして、「歩くこと」の楽しみ方や効用などが注目されている。しかし、自然の空気に触れながらの散策などと異なり、街における「歩く」という行為は、そのこと自体の魅力を希薄化させつつある。例えばウインドーショッピングなども、商店街の衰退などによって「楽しさ」が消えつつある。目的自体に楽しさがなくなると、「歩く」という行為は無機的なものにならざるを得ない。

 街に歩く楽しさを持ち込もうというのは、決して新しい考えではない。それどころか、街はもともと歩いているだけで楽しくなるような要素に満ちていた。

 近年の金沢における中心部空洞化の問題などを考えてみても、街を歩くことの楽しさを考え直す必要性に、ふと、あらためて気付いたりするのである。

 東京都の墨田区では、昭和61年から「小さな博物館」運動という事業を進めてきた。博物館といっても、ほとんどが住宅の一部や工場を公開したもので、住民の自主的な運営に任せたものである。内容も住民自身が手掛けている産業製品が主であり、それらを墨田区の文化資料として展示紹介しているといった具合だ。区は月2万円の運営補助金と共通ガイドマップ作成費などを負担している。現在20館が参加し、例えば東京へ修学旅行でやって来た生徒たちまでもが訪れているという。

 この事例などは、中心市街地の活性化を模索する金沢に明快なヒントを提供するものだ。尾張町の一品ミニ美術館の展開があるように、金沢にはこのようなことを可能にする素地がある。

 金沢の場合で考えると、まず観光客と一般市民との双方にメリットのある仕掛けが求められる。そして、そのことを充たすためには、観光コース(例:見て歩きコース) を踏まえた仕掛け配置などが有効となる。点在させる仕掛けとしては、例えばミニ資料館やミニギャラリーといった類のものが考えられる。金沢には20を越える伝統工芸があるが、それらを例えばごく小さな空間の中で紹介していくのもいいだろう。また、歴史のある金沢らしく、界隈の物語などが紹介されていても面白い。地元アーチストの作品などが展示されたコンパクトな施設もあっていい。いずれにせよ、これらの施設は、例えば街角の交番のような、またバス停のようなイメージで存在し、休憩機能も持ち合わせたものにする。歩く快適さの中では、ある程度休憩できることも重要な要素だからだ。

また、このような施設の展開には核となる施設の存在も必要となる。例えば現在の近代文学館を旧四高の資料館として再整備し、今展示されている文学資料は、作家それぞれの所縁の土地に個別の資料館として分散させることも考えられる。これらの施設はそうすることによって、それぞれのエリアのシンボルともなる。

 歩くための仕掛けづくりは、このようにして街の個性づくりにも結び付くのである。
<< 戻る
PAGE TOP