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「電子商取引の発展のために」
加久間 勝 金沢学院大経営情報学部長 工学博士

97.07.21


(かくま まさる)旧浜松工業専門学校電気通信科卒。逓信省、電気通産省、日本電信電話公社電気通信研究所基幹交換研究部処理プログラム研究室長、金沢工業大学教授、情報工学科主任教授を歴任し、平成6年4月から現職。この間、石川県技術顧問、先端技術振興委員会委員などを兼務。電子交換機の制御、ニュートラルネットワークとパターン認識の研究に取り組む。著書に「システム工学」「FORTRAN77入門」などがある。
 インターネットを使った電子商取引が発展することを期待している。しかし、インターネットは無管理なネットワークであり、ルータ経由で全世界へ広がっているため、ルータを通過する情報を簡単に盗聴でき、データの改ざんと破棄が容易という欠点を持っている。この欠点が電子商取引を推進して行く上での問題点であり、これに対処するための方策を考えてみよう。

 第一は、利用者の倫理に関することである。インターネットでオンラインショッピングをしたら、イタズラ電話がかかってきて困ったという話を聞く。これは悪意の第3者が、ショッピング情報を盗聴し、氏名と電話番号をインターネットのネットニュース(電子掲示版)に掲載したためである。早速サービスプロバイダーに連絡したが、「誰が載せたかは教えられないし、個人のやりとりにプロバイダーは責任を負えない」とのことであった。その理由は、プロバイダーは接続業者であり、通信の秘密と、表現の自由を守ることが義務づけられているが、情報を監視する判断基準が無く、膨大な情報を常時チェックすることが困難であるからである。この問題は法律的な処罰の対象になりにくいし、技術的にも防止できないから、インターネットを利用する場合には、個人情報やプライバシーが守られていないことを十分認識し、自己責任の下で自衛する手段を講じておくことが必要である。

 第二は、通信文の暗号化である。インターネットのホームページ上に開設されたヴァーチャルモール(仮想店舗)を利用する通信販売では、仮想店舗への注文は、インターネットを使って商品名、数量、送り先住所、氏名、クレジットカード番号を送信するのみでよく、代金の支払いはクレジットカードによる既存の決済方法で行われている。利用者から仮想店舗への注文の通信文は、上記のような問題が発生しないように、ほとんどの場合、暗号ソフトにより暗号化して伝送され、通信文の安全性を保証している。暗号化には、これまで発信者、受信者共に同一の秘密鍵を用いて暗号文を作成し解読する「秘密鍵」暗号方式が用いられていたが、これからは通信文を暗号化する公開鍵と、暗号文を解読する秘密鍵の二種類の鍵を用いる「公開鍵」暗号方式が採用される。通信文の暗号化には、送信者は受信者の公開鍵で通信文を暗号化して伝送し、受信者はこの暗号文を秘密鍵で解読する。これからは「暗号ビジネス」の時代といわれ、よりすぐれた暗号方式の開発が期待されている。

 第三は、「電子マネー」の実用化であり、その研究と利用実験が世界的規模で行われている。電子マネーは一般通貨と等価なもので、コンピュータ間を転送するデジタルデータの形で実現される。デジタルデータは改ざんや複製が容易であるから、暗号技術を用いて内容を保証し高信頼度化することが必要である。この内容の保証に「電子署名」の技術が考案されている。電子署名には公開鍵暗号方式と類似の方法が用いられる。電子署名では、署名する本人が署名を秘密鍵で暗号化して伝送し、受信者は公開鍵を用いて解読する。この秘密鍵は署名した本人しか知らないから、この署名の作成者を特定できる。電子マネーは公的な発行機関で発行され、その内容は発行機関の電子署名により保証される。この電子マネーを国境を意識しないインターネットの世界で利用すると、国ごとの通貨規制を無意味にする可能性が考えられ、当然国際的な規制が必要になる。インターネットに関する問題は、一つの国のみでルール化することが出来ず、国際的なコンセンサスが必要であるため、電子マネーの実用化にはまだまだ時間がかかるものと考えられる。
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