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「イタリアの中小企業に学ぶこと」
竹味 能成
北國総合研究所研究員 金沢学院大学経営情報学部助教授
97.04.14
(たけみ よしなり)昭和49年静岡大学人文学部卒。立命館大学非常勤講師を経て、昭和62年金沢女子大学(現金沢学院大学文学部)講師。平成7年より現職。現在、北陸環日本海経済交流促進協議会理事・企画部会委員。
最近、イタリアの中小企業が、日本の中小企業の今後めざすべき一つのモデルとして注目を集めています。イタリアの中小企業といえば、繊維・衣服、靴・皮革、家具・木工、貴金属・宝石といったファッション関連産業で世界的に有名な企業が思い浮かびます。これらの産業は古くからの伝統的なものも多いのですが、第二次大戦後発展した新しいものも少なくありません。また、機械類やハイテク技術製品の分野などにも中小企業の発展が見られます。
中小企業の中でも、イタリアで特色があるのは、従業員10人以下(場合によっては20人以下)の小さな規模を持つ「職人企業」と呼ばれるものです。これらの企業は、1970年代のオイルショック後の経営環境の変化の中で、イタリア経済の成長を支える役割を果たしてきました。企業の規模が小さいのはもちろん資本力が小さいからですが、他面では規模の拡大を志向しないためでもあります。企業経営の理念として、リスクをともなう規模の拡大よりも安定した生活ができるだけの利益の確保を重視するわけです。また逆に、規模の小さいことが経営者と従業員との良好な協調関係をもたらし、創意性を発揮させることにつながっているのです。
職人企業のもつ大きな特色の一つは、製品の高品質化・高付加価値化にあります。これは製品の差別化による競争力の強化につながり、特定分野の製品に専門的に特化することによって、市場の需要動向に対する高いフレキシビリティーをもつことを可能にします。このようなことが可能となるのは、そうした製品分野の市場規模が小さく、したがってそこでの収益性が低いため、大企業の参入が容易でないことによります。そのため逆に、中小企業にとっては発展の余地が生まれることになるのです。また、そのような市場分野での収益性を高めるためには、製品の海外輸出の拡大が必要になります。そして、この輸出の拡大においても、定番品ではなく高品質・高付加価値製品の開発が必要となるのです。中小企業がこうした能力をもつためには、親企業や商社に対する依存関係を転換させる必要があります。つまり、それらに対する提案能力や独自製品の開発能力を身につけなくてはならないのです。しかし、これを中小企業が個々に単独で行うことには困難があります。
イタリアでは職人企業の組織が作られ、各種のサービスの他、輸出振興・コンサルタント・企業立地・研究開発などのための諸活動を行っています。そして、産地において生産から販売までの機能が統合され、産地システムとして企業間の分業体制が形成されています。また、憲法によって大きな権限を与えられている各自治体が、共同受注・下請け斡旋・入札代理・海外での活動などを行うための「事業連合」の設立や、新規企業設立への資本参加のためのマーチャントバンクの設立などの、様々な中小企業支援活動を行っています。イタリア中小企業の成功を支えているのは、このような中小企業こそが経済の主役とする考え方に基づく官民一体の取り組みだといえるでしょう。
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