会員サービスのご案内
会員案内
北國いい情報
ウィークリーレポート
北國TODAY
北國総研ビジネス情報懇話会
入会申込
北國総研について
ご挨拶・概要
役員・研究員のご紹介
事業内容・実績
提言
自主研究
そうけん掲示板
個人情報保護方針
お問い合わせ
<< 戻る
管理職年俸制導入は目的を明確に
池澤 章雄
金沢学院大学 経営情報学部教授
96.06.05
(いけざわ ふみお)昭和8年神奈川県生まれ。東大卒。産能短大教授、産能大学経営開発研究本部主幹研究員を経て平成7年から現職。専門は経営管理論、労務管理論。著書に「人事考課の考え方・進め方」「男と女の新時代」「働きやすい職場管理」など多数。
外国のある経営学者は、自分が処理したり、判断・決定した仕事の成果が確認できるまでの期間《span of discretion(裁量・判断)》により賃金は決定されるといった。単純作業者の賃金は時給・日給、意志決定の結果が出るまで一年前後を要する経営者の仕事は年俸、その間にある仕事には月給が対応することになる。経営幹部の賃金について別の経営学者は「幹部賃金の主目的は、幹部をして会社の事業を自分自身のもののごとく指揮させる誘因を設けることにある」という。ここに、管理職年俸のありかたを解明するカギがある。
昭和の初期、民間の大手企業に賞与の慣行が定着し、普通賞与と特別賞与の二種類を採用する企業もでてきた。普通賞与は全員に定率支給されその率は低く、特別賞与は階層で支給率に差がつけられた。当時、大企業幹部の年収が大きかったのは特別賞与があったからである。この特別賞与は利益配分的な性格をもっており、利益がないときには支給されなかった。 ヨーロッパのマネジャーには、年俸が適用されている。米国のブルーカラーはwageであるが、マネジャーには基本給のほか目標達成度に応じた短期インセンティブ給と長期インセンティブ給が支給され、後者はストック・オプションに代表される株式が用いられる。
日本で管理職に年俸制を適用するに際しては、検討・論議すべき事項がある。以下は、その一部にすぎない。1)年俸制の目的が経営側と年俸適用者の間で共通に理解され納得されているか。 2)工場労働者が過半数であった昭和22年に施行の労働基準法は「賃金は毎月1回以上支払う」とし、月間労働時間と月例賃金を対応させ、所定労働時間を超えた時間に対しては割増賃金を支給するとした。本来の年俸制は、これに違反する。そこで、管理職にあるものをすべて所定労働時間の適用除外者であると解釈し管理者には月給ではなく年俸を適用している例が多い。しかし、この解釈に法律上問題はないか。3)固定の年俸制という例が少なくないが、固定給である月例給与と成果配分給である賞与という制度や思想が定着している日本で、これらに逆行することにならないか。年俸にしなくとも、賞与をインセンティブとして活用する道はないのか。4)年俸額がインセンティブかつ魅力的であるか。賃金を低く押さえる手段として利用されることはないのか。 5)年俸制が一年ごとに労働契約を締結しそのつど年俸を更改するということであれば、賃金面だけでなく雇用上の変革になるが、そこまで踏み込めるのか。6)目標設定と業績評価の際、率直な意見交換ができるか。日本の職場風土や人間関係の中でどれだけ自己主張できるか疑問がある。7)専門性の高い職種にはともかく管理職の能力・業績評価で納得性のある評価基準や評価方法を確立できるか。8)年俸交渉が成立しない場合、別の会社に転職できるほど日本の労働市場は広くはない。そうなると、年俸の引き下げを不本意ながら受け入れるか、失職するかの選択肢しかない。9)管理職の機能・役割、責任・権限、資格要件、処遇、選考などの論議が先行すべきであろう。
<< 戻る