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地域づくりについて自由闊達な議論を
水野 雅男
北國総合研究所研究員 地域プランナー
04.08.01
(みずの まさお)東京工大理工学研究科社会工学専攻を修了後、シンクタンクの研究員などを経て、平成5年、(有)水野雅男地域計画事務所を設立。
私は地域づくりに深く関わるようになってから、地域づくり活動に関心のある人たちに情報を発信し交換することがとても大切だと思えてきた。そこでまずニュースレター「ひとりごと」を発刊し出した。テーマごとに問題意識と提言を述べるもので、もうすぐ40号となる。これと並行してホームページを立ち上げるとともに、比較的短いメッセージとして「つぶやき」をメール配信しており200号を数えた。これら以外にも自分が携わっている地域づくりの情報をこまめに配信し、たくさんの返事をいただいている。
その「つぶやき」で、金沢駅東口のガラスドームのデザインや大きさについて疑問を投げ掛けたとき、ある市職員から「その業務を直接担当していないが、今まさに建設が進んでいる時にあのような意見のメールを読むと、同じ行政組織の職員として不快だ」とのコメントをもらった。また、別の会議で同席した市職員は、所属している部署の施策や事業などについておかしいと思っても反論できない上意下達の組織構造になっているとこぼしていた。
「地域住民の意向を汲んだ住民参加の計画づくり」という言葉は聞き慣れて久しい。しかし、実際は全く逆のことが多い。首長の意向と単年度予算に縛られた「行政担当者」、その担当者の言いなりに調査計画を遂行する「コンサルタント」、行政に反対意見を述べないメンバーで構成された「委員会」、この3者で計画づくりが進められる。地域住民の意向を形式的に聴取する各種調査やワークショップが例え挟まれたとしても、結論には大きく影響しない。
「住民は地域づくりへの情熱がない」という言葉を行政職員から聞くことが多い。それは、住民が地域づくりの情報にふだん接していないこと、計画づくりの結果だけ知らされて意見が反映されなかったというプロセスの問題があることが原因であり、当然の結果だろう。そうならないために、情報をしっかり開示して積極的に伝える努力が必要だし、いろんな意見を素直に出し合える土壌が不可欠である。
そのためには、「議員」と「シンクタンク」の果たす役割は極めて大きい。行政組織と地域住民の間に位置しており、中立な立場で行政組織と関係を保てるからだ。議員は、地域住民が求めている情報を、行政から引っ張り出してきてそれを公に開示する努力が必要だ。しかも、行政データをそのまま出すのではなく、一般市民が理解しやすいように翻訳しなければならない。例えば、道路事業の予算はいくらであるという数字よりも、その数字は市民一人あたりいくらになるとか、他の行政組織との比較、あるいは福祉事業と比較してどのぐらいの割合であるかなど、関心を持ってもらえるような提示が必要だ。
もうひとつの北國総研をはじめとするシンクタンクは、開示されたデータを分析した上で、議論のテーマを提示し、市民が自由に意見交換できる場を提供すべきである。インターネットでのメール配信、あるいは実際の意見交換フォーラムの開催などが考えられる。その積み重ねられた議論をもとに、行政に対して政策提言を行うことが求められる。こういう一見地味だが、住民サイドにたった活動は、先述したコンサルタントとの差別化を図り、シンクタンクとしての存在意義を明示できるものである。
北陸のひとは自己主張が弱い、自分の意見をアピールしたがらない。そういう土壌にあってこそ、住民本位の地域づくりを進める上で、両者への期待は大きい。
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